先の【EAPとは?】の記事では「EAPはどういったものか?」「EAPは何ができるか?」についてご理解頂けたと思います。今回は、一括りとしてEAPと言われる業者にどんな種類があるかについてご説明します。実は1つとして同じ業態のEAP業者はなくカテゴライズもとても難しいのですが、この記事がEAP業者を選ぶ際の参考になれば幸いです。
EAPは大きく分けて3種類
まず、EAPは大きく分けて以下の3種類に分けることができます。
①従来型EAP
②産業医型EAP
③医療機関型EAP
3つのEAPを順を追って説明していきますので、メリットとデメリットを十分理解した上でEAP業者に相談することをおすすめします。
従来型EAP
①従来型EAPは、長い歴史があり、全国規模で事業所展開をしています。「従来型」という言葉を聞くと、形態が古いの?とか少しネガティブな印象を持つ方もおられるかもしれません。しかし、決してそういうことではありません。保険会社、システム会社、健康保険組合などを母体にしている業者も多く、大規模でシステムに強いことが特徴です。
ストレスチェックも強固なシステムで1人あたり500円ほどの安価で提供できます。全国の大都市に拠点があることから、大企業と親和性が高いと言えます。産業医派遣、カウンセラー派遣、セミナーも広範囲大人数で行うことができます。
低単価だかデメリットも
ただ、大規模であるが故のデメリットも存在します。例えば、大手EAPの従業員相談ダイヤルは24時間365日で実施されていると思いますが、正社員だけで稼働させることは困難で、どうしてもアルバイトなど非常勤職員も駆使して回すことになります。先の記事【EAPとは?】でも紹介しましたが、相談ダイヤルは運用がとても難しく、特に問題解決が必要とされる案件の場合は、電話やメールだけで完結させることは至難の技です。
やり取りにはかなりの時間と労力が必要になります。アルバイトが正社員に案件を引き継ぐとしても、ファーストコンタクトの際に企業担当でないアルバイトが聞き取りを行うかたちでは、せっかく勇気を出して電話をしてきた方に不必要な説明をさせてしまうことになります。また、業務関連の話であれば、その核心を理解することも難しいのではないかと思います。
ただ、サービスの時間を『平日の9時~18時』でなく、『24時間365日』と拡充するには、アルバイトを導入する以外の方法はないですし、高い意義があることも否定できません。24時間365日、会社に知られず自身の健康相談ができることは大きな安心となると思います。
また、大規模対応をするが故に、産業医派遣もカウンセラー派遣もどうしても登録の非常勤スタッフを派遣することとなり、専門性や特化性が低下してしまいます。連携医療機関に関しても、書類上だけの連携に留まり、専門分野やパーソナリティなどは確認されていないこともあるようです。
産業医型EAP
②産業医型EAPは、文字通り産業医派遣を中心とした業務を行います。中心となる産業医が友人関係などを駆使したくさんの産業医を抱えているところ、個人の産業医が自分の手の届く範囲でしているところなど規模は様々です。全国的な組織ももちろんありますが、一都市に根差して運営しているところが多い印象です。産業医は決して精神科医という訳ではありません。
産業医派遣業務に付随して、ストレスチェックやセミナー、カウンセラー派遣などを行うため、EAPと業態が重複するのですが、自社をEAP業者だとは考えていないところも多いかもしれません。
医師は、他の医療スタッフと異なり、やろうと思えば出来ない業務はありません(医療スタッフは、休職者の復帰や不調者の就業制限などの助言をすることはできません。予防接種もできません)。そういった意味では、様々なことをしてくれる柔軟性のある産業医に出会えると会社はとても助かると思います。
ただ、産業医は基本的に月に1回のスケジュールで事業所を回るので、産業医だけしか巡回できない場合はタイミングが合わずに困ることもあります(もちろん、別途費用で他のスケジュールに来てもらうことも可能だと思いますが…)。
産業医は医師=先生であり、スケジュール調整や書類申請などは自らの範疇ではないと考える方も多いので、人事総務担当者が主導となることが多いかもしれません。また、担当者は「先生に相談することではないんだけど…」と小さな疑問を聞けずにいることも多いようです。そういった少しの不自由に関しては、産業医型EAPのデメリットだと考えます。それらを解消するために、ケースワーカーや保健師を事務スタッフとして少数採用している業者もあります。
医療機関型EAP
精神科・心療内科系の医療機関を母体としたEAPで、通常医療機関に併設しています。企業の人事総務担当者が最も頭を悩ませるメンタルヘルス対応に強いのが特徴です。精神科産業医を中心に、メンタル不調者の面談や休職者対応、リワークプログラムを実施していますが、保健師・看護師、臨床心理士も精神科・心療内科経験者が多く、面談などで活躍しています。
従来型EAPと比べると、小規模の事業所が多く、その代わりに常勤職員がクライアント企業に対し、深く幅広く関わります。ストレスチェックについても、巨大企業の対応は従来型のEAP企業にアドバンテージがありますが、職場への部署別フィードバックなどでは、職場の特徴や特殊性を理解し、フィードバックは一般的な内容に留まりません。産業医派遣に関しては、産業医の訪問時以外にも医療スタッフがフォローします。企業の人事総務担当者の敷居の低い相談相手として機能します。
従業員支援プログラム・EAPまとめ
EAPの種類について、ご理解頂けたでしょうか。それぞれの企業によって、必要なEAPは異なると思います。メンタル不調者が全くおらずストレスチェックだけをして欲しい大企業、規模はそれほど大きくないが休職者が多く困っている企業、定期的に出るメンタル不調者に対して随時面談を行って欲しいなど、ニーズは企業によって様々です。
最後にEAP業者を選ぶポイントは、『自分の会社の困りごとに対する問題解決の力』。これに尽きると思います。EAP業者はそれぞれに得意不得意があります。それを自社の特徴と合わせて選択して頂けたらと思います。