「ジョブコーチ」とは、障害者が就労するにあたり、障害者(家族も含む)と事業主に対して職場適応に向けたサポートをする人のことです。「職場適応援助者」とも言います。2002年に厚労省が創設した「ジョブコーチ支援制度」によって導入され、障害者が円滑に就労できるよう職場内外の支援環境を整え、障害者の雇用の促進および職業の安定に資することがジョブコーチ支援の一番の大きな目的です。
ジョブコーチになるには?
ジョブコーチ制度は厚生労働省が推進する支援事業のひとつで、基本的には無料でサポートを受けることができます。ジョブコーチには試験はなく、厚生労働大臣が指定する民間の養成機関で研修を受講することで資格を取得できます。研修は「訪問型職場適応援助者養成研修」と「企業在籍型職場適応援助者養成研修」の2種類があります。この記事では、「訪問型職場適応援助者養成研修」についてご説明します。
訪問型ジョブコーチ(職場適応援助者)とは?
障害者の就労支援を行う社会福祉法人等に雇用されるジョブコーチです。独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構、または厚生労働大臣が指定する民間養成機関が行う訪問型職場適応援助者養成研修を修了しなければなりません。※訪問型ジョブコーチと企業在籍型ジョブコーチでは、役割が異なりますので研修内容も異なります。
訪問型職場適応援助者養成研修の内容は?
講義中心の座学と演習やケーススタディを中心とした実技の研修を行います。以下は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する研修カリキュラムの例です。
・作業指導の方法
・障害特性と職業上の課題
・支援計画に関する理解
・ケーススタディ
・職場実習 など
誰でも研修は受けられますか?
研修を受けるには以下のような条件があります。詳細は「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」のホームページに書かれていますので、気になる方はホームページもぜひご確認ください。
次の(1)から(4)のいずれかに該当し、集合研修及び実技研修の全ての日程・カリキュラムを受講できる見込みのある方
(1)次のいずれにも該当する方
・障害者の就労支援を行う法人等(注1)に雇用されている方、又は同法人の代表者・役員
・障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)を活用した訪問型職場適応援助の対象者(障害者又は事業主)が具体的に決まっており、そのために研修受講が必要な方
・受講申請の時点で、障害者の就労支援に係る業務(注2)の経験が1年以上ある方(通算で可)
(2)次のいずれにも該当する方
・障害者の就労支援を行う法人等(注1)に雇用されている方、又は同法人の代表者・役員
・障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)を活用した訪問型職場適応援助の対象者(障害者又は事業主)が具体的に決まっていないが、研修修了後1年以内に助成金を活用した訪問型職場適応援助を予定しており、そのために研修受講が必要な方
・受講申請の時点で、障害者の就労支援に係る業務(注2)の経験が1年以上ある方(通算で可)
(3)次のいずれにも該当する方
・医療機関に所属している方、又は医療機関の代表者・役員
・受講申請の時点で、精神障害者等の就労支援(注3)を担当している方
・精神障害者等の就労支援をより効果的に行うために、研修受講が必要な方
(4)次のいずれにも該当する方
・障害者の就労支援を行う法人等(注1)に雇用されている方、又は同法人の代表者・役員
・受講申請の時点で、障害者の就労支援に係る業務(注2)を担当している方
・障害者の就労支援をより効果的に行うために、研修受講が必要と職業リハビリテーション部長が認める方
(注1)「障害者の就労支援を行う法人等」とは、障害者の就労支援を行うことが定款やパンフレットに明記されており、受講申請の時点で障害者の就労支援を実施している法人です。
(注2)「障害者の就労支援に係る業務」とは、障害者の就職や雇用継続のために行う、(1)職業指導や作業指導、(2)職場復帰の支援、(3)雇用管理等です。
(注3)「精神障害者等の就労支援」とは、精神障害者保健福祉手帳所持者、統合失調症や気分障害及びてんかんの患者との職業相談を含みます。
(注4)受講申請の時点から5年以内に障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)の企業在籍型職場適応援助、企業在籍型職場適応援助促進助成金及び第2号職場適応援助者助成金の支給実績がある方については、訪問型職場適応援助者養成研修補完研修カリキュラム(実技研修のみ)の履修により修了証書を交付します。
(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構ホームページより)
研修はいつどこで受けられるの?
集合研修と実技研修の日程と開催場所は以下になります。
・開催時期:4月、5月、6月、9月、10月、12月、2月
・日程:各月とも4日間
・開催場所:東日本(千葉県幕張)、西日本(大阪市または摂津市)と全国(幕張)があり、所属する事業所などの該当する地域が受講の対象となります。
集合研修は東西、全国合わせて年に10回程度行われています。新型コロナウィルスの影響で延期中止などの可能性もありますので、スケジュールは独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構にご確認下さい。また、開催時期によっては西日本の開催がない場合もありますので、ご注意下さい。
各会場場所の詳しい場所は、以下のとおりです。
・開催時期:都道府県によって異なります。
・日程:集合研修後、4日間
・開催場所:各地域障害者職業センターにより決定
なお実技研修は、少人数の実習を中心としたカリキュラムであるため、各期の受講人数には制限があります(東京40人、大阪20人、埼玉・千葉・神奈川・京都・兵庫16人、その他の道県は6名)。
※独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構のジョブコーチ養成研修は、障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)を活用した訪問型又は企業在籍型障害者職場適応援助を行う予定のある方に対して優先的に実施されます。
研修費用はいくらかかりますか?
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(地域障害者職業センター分については、無料です。しかし、その他の指定機関(NPO法人ジョブコーチ・ネットワークなど)は有料となります。5万円ほど費用が必要ですが、一定の要件を満たせば、障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)により、受講費の半額が補助されます。
ジョブコーチになるには?まとめ
訪問型ジョブコーチの資格取得について、ご理解頂けましたでしょうか。ジョブコーチは障害やメンタル不調を抱えながら働く当事者だけでなく、企業側にも大きなメリットがあります。その割には、世の中の認知度はまだまだ低いのが現状です。ジョブコーチの資格を取得し、皆が生き生きと働くことのできる社会を目指しましょう!