ストレスチェックとは、労働者の精神的な不調を未然に防ぐための検査です。「自分のストレス状態がどのようなものなのか」についての57問の質問票に労働者が記入するかたちで進めます。常時50名以上の労働者を使用する事業場に実施義務があり、職場環境改善のきっかけにもなります。
ストレスチェックって意味があるの?
新しく訪問した企業の担当者から「ストレスチェックって意味があるんですか?義務だからしてますけど…」と聞かれることがあります。
確かに、ストレスチェックの目的のひとつ「こころの健康診断」という部分では、会社にもたらす恩恵は感じにくいかもしれません。特に、高ストレス者がほとんどいなかったり、メンタル不調者がいない職場だと尚更です。
ただ、ストレスチェックにはもうひとつの大きな目的「集団分析を元にした職場環境改善」については、会社に大きな恩恵をもたらすと考えています。もし、それでも「意味がない」というのであれば、会社は従業員の働きやすさや職場環境改善に本気で取り組んでいないのかもしれません。
もしくは、今のストレスチェック委託業者の分析は一般的過ぎたり絵空事過ぎたりして、会社の役に立つ内容でないのかもしれません。
ストレスチェック集団分析とは?
ここでは、ストレスチェック後に行われる集団分析について説明していきます。
ストレスチェックは常時50人以上使用する事業場では実施義務がありますが、集団分析に関しては今のところ努力義務となっています。
※「事業者は、実施者に、検査の結果を一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めるとともに、この分析結果を勘案し、必要と認められる場合は、その集団の労働者の実情を考慮して、この集団の労働者の心理的な負担を軽減するため、適切な措置を講ずるよう努めなければならない。」ストレスチェック制度に関する省令(労働安全衛生規則の一部改正)
集団分析は、ストレスチェックの結果を一定規模の集団ごとに集計し、分析することで行われます。集団別に質問ごとの平均値を求めて比較することで、「同僚の支援が得られにくい」「業務の自由度が低いと感じている」などその集団独自の問題が把握できます。
集団分析は、通常ストレスチェック委託業者が行いますが、会社はその内容を元に、職場環境の改善を行います。また、集団分析は原則10人以上の集団を対象にして、個人が特定されないように配慮して行います。
「職業性ストレス簡易調査票」と「仕事のストレス判定図」
ストレスチェックの質問紙に、国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)使用した場合は、「職業性ストレス簡易調査票」に関して公開されている「仕事のストレス判定図」を利用することができます。
「仕事のストレス判定図」は標準的ではありますが、仕事のストレスを4つの側面から評価するもので、それ以外の項目のストレスを評価することはできません。なので、「仕事のストレス判定図」を使う場合、職場の従業員からの聞き取りで、他に考慮するべき事項はないか検討する必要があります。
仕事のストレス判定図とは?
仕事のストレス判定図は、業務上の心理的なストレス要因が、労働者のストレスの状態や健康にどのくらい影響があるのか調べるためのものです。上の図が仕事のストレス判定図で、下の図が図の読み方になります。色が濃くなればなるほど、危険な状態です。
集団分析(ストレス判定図)から読み取れること
任意の部署を集団分析し上司の支援が著しく低い場合、上司の働き方や部下へのアプローチに目を向けます。まず、上司の支援が低いこと=上司のマネジメント能力が低い ではないことを理解して下さい。
考えられるのは、「上司がプレイングマネージャーであまり席にいなくて相談できない」「上司の座席がブースで区切られていて物理的に接しにくい」「そもそも仕事が個人で解決し上司のサポートをあまり必要としない」「人間関係が複雑で、上司の部下へのアプローチを阻害する要因がある」などです。
もちろん、上司のマネジメントに問題があったり、パワハラ的な振る舞いがあるなど上司自身に直接の原因がある場合もあります。
集団分析の重要ポイント
大切なのは、「上司の支援が低い」という結果を受けて、「どういう理由が考えられるのか?」「どうすれば、上司の支援が好転し働きやすい職場となるのか?」など経営層を中心に検討することです。場合によっては異動も必要かもしれませんが、まずは、根本原因を探ることが先決です。
また、分析は会社全体の経年変化や部署別分析が注目されがちですが、職種別、年齢別、男女別、雇用形態別で考えたりすると違った問題が見えてくる場合もあります。
ストレスチェックの集団分析まとめ
ストレスチェックに意味はあります。従業員の「こころの健康診断」という意味でもそうですし、集団分析に基づく職場環境改善は会社全体に利益をもたらします。
『健康経営優良法人』などの外部評価は、就活生が会社を選ぶ際のひとつの指標となりつつあります。しかし、実際は非ホワイトな健康経営優良法人がいくつもあるのが現状です。働く従業員が愛社精神を持って働くことのできる会社作りには時間も労力もかかります。
しかし、本当に働きやすい会社、働きがいのある会社は離職率の低下や生産性の向上としてじわじわと効果が表れ、最終的には「選ばれる会社」となるのです。