ストレスチェックとは、労働者の精神的な不調を未然に防ぐための検査です。「自分のストレス状態がどのようなものなのか」についての57問の質問票に労働者が記入するかたちで進めます。常時50名以上の労働者を使用する事業場に実施義務があり、職場環境改善のきっかけにもなります。
ストレスチェックはメンタルヘルスに関する健康診断で、回答した結果やプライバシーの保護など慎重に進めていく必要があります。受検する従業員に安心してストレスチェックを受検してもらうためには、欠かせない役割が3つあります。今回はその3つの役割についてお話をしていきます。
ストレスチェック実施者とは?
実施者とは、ストレスチェックを主体となって実施する人のことです。医師、保健師、厚生労働省が定める研修を修了した看護師、精神保健福祉士、公認心理士の有資格者も務めることが可能です。EAP業者などに外部委託することも可能です。
実施者の役割
実施者の役割は以下の3つになります。決定自体は事業者が行いますが、医学的見地から助言します。
①ストレスチェックの調査票の選定
②ストレスの程度の評価方法
③高ストレス者選定の基準の決定
実施者になれるのは?
先に書いたように、実施者になれるのは、医師、保健師、厚生労働省が定める研修を修了した看護師、精神保健福祉士、公認心理士の有資格者です。その中でも実施者に最も望ましいのは、その事業場の職場環境についてよく知る産業医です。
産業医が非精神科医でストレスチェックの実施者に消極的な場合は、ストレスチェックを外注しているEAP業者にお願いするのもひとつでしょう。EAP業者には保健師などストレスチェックの実施者になることのできる人材が必ず所属していますし、高ストレス者選定に関しても問題なく実施可能です。
しかし、EAP業者に実施者を依頼する場合でも、産業医には「共同実施者」として関与してもらうと良いでしょう。高ストレス者選定や高ストレス者医師面談には消極的な産業医でも、実施結果の報告は快く受け入れてくれると思います。
実施事務従事者とは?役割は?
ストレスチェック実施の実務を行うのが実施事務従事者の役割です。具体的には、調査票の回収や集計、データ入力や結果の出力・送付、高ストレス者面接指導の申出勧奨などを行います。
回答内容や高ストレス者との連絡など個人情報を扱うことになるため、実施事務従事者には厳格な守秘義務が生じます。労働安全衛生法に基づき守秘義務が課せられており、違反すると処罰の対象となります。
人事総務担当の従業員が担当することが一般的ですが、実施者と同様EAP業者などに外部委託することも可能です。しかし、結果の保存・管理、高ストレス者との連絡など社内で運用する方がスムーズな業務がいくつもあるため、外部委託することはおススメしません。
実施事務従事者になれるのは?
実施事務従事者には、従業員の健康管理を担う人事総務担当の従業員が就くのが一般的です。大きな事業場で保健師などの健康管理スタッフがいる場合は、その方達でも良いでしょう。ただ、資格などが必要な訳ではないので、その他の部署の従業員でも担当することは可能です。
ただし、人事部長や役員など、人事権を持つ方は実施事務従事者になることができません。通常、課長職以上の方を管理職としている企業が多いと思いますが、その場合人事課長の方も避けるべきです。
実施事務従事者には個人情報に関する厳格な守秘義務があるのだから、人事権を持っていても大丈夫ではないか、と思うかもしれません。しかし、人事権を持つ方が実施事務従事者になることで、一般の従業員の方は受検しにくかったり、本音での回答をしにくかったりします。
そういった可能性は全て排除する方が望ましいのです。しかし、入社して2~3年の従業員が担当するのも弊害があり、実際には、課長代理や係長といった管理職手前の方が担当されることが多い印象です。
制度担当者とは?役割は?
制度担当者は、ストレスチェックの実施計画の策定、実施の管理を行います。人事権を持つ方でも担当することが可能で、従業員の個人情報を取り扱わない事務作業、実施日時などの通知、実施者との連絡調整、調査票の配布、未受検者への受検勧奨などは行うことができます。
制度担当者になれるのは?
事業場の衛生管理者、健康管理担当者が担うことが望ましいとされていますが、個人情報を直接取り扱わないので、人事権を持つ方でも担当することができます。ストレスチェックの実施計画の策定、実施の管理など責任の大きな役割を担うので、一般的には人事総務部長、人事総務課長など管理職の方が担当することが多くなっています。
ストレスチェック実施者まとめ
ストレスチェック担当者の役割をご理解頂けましたか。まれに、委託を受けた企業様の制度担当者から「○○さんの結果を教えて欲しい」と問い合わせがあります。実施事務従事者は、高ストレス者であってもそうでなくても、結果を知ることができます。
しかし、制度担当者は【高ストレス者で且つ医師面接指導を申し出た従業員】【会社への情報開示を承諾した従業員】でなければ、結果を知ることはできません。実施者、実施事務従事者、制度担当者それぞれの役割や業務の範囲などを理解し、従業員が安心して受検できるストレスチェックにしましょう。