「常時50人以上の労働者を使用する事業場」…会社の人事総務担当者の方、衛生管理者の方であれば、一度は聞いたことのある言葉だと思います。しかし、その正確な意味をご存知の方は少ないのではないでしょうか?
常時使用とは?
「常時使用」とは、「常態として雇っていること」をいいます。”常態”とは、”普段の状態”と言い換えることができます。常時使用というと正社員をイメージするかもしれませんが、決してそうではありません。
雇用形態別にみると、常時使用の対象は、会社の所定労働時間数に関わらず週1日、1日3時間などのパート・アルバイトといった非正規の直接雇用契約者も含まれます。派遣労働者については、産業医、ストレスチェック、衛生管理者については常時使用に含めて計算します。継続的な雇用を想定した日雇労働者も常時使用に含めます。
例外として、シルバー人材センターから派遣されている労働者については、通常雇用契約ではなく請負契約になっています。なので、常時使用にはカウントしません。
事業場とは?
事業場=企業ではありません。事業場=同じ建物、もしくは同じ敷地内のひとつの建物(群)と考えて頂ければと思います。なので、常時使用する労働者がちょうど50名の企業であっても、労働者全員が同一の建物内で使用されているのであれば、常時50人以上の労働者を使用する事業場を持っていることになります。
逆に、1,000人規模の企業であっても、常時使用する労働者が50名未満の本社と同様の店舗がいくつもある企業の場合は、常時50人以上の労働者を使用する事業場を持たないことになります。
では、産業医、ストレスチェック、衛生管理者において、具体的にどのように義務が発生し、運用されるのかを見ていきたいと思います。
産業医
「常時50人以上の労働者を使用する事業場」で選任義務が発生しますが、常時使用については、先に説明したとおりです(正社員だけでなく、週1日、1日3時間などのパート・アルバイトといった非正規の直接雇用契約者も含む。派遣労働者も含む。請負契約者は含まない。)。
ストレスチェック
「常時50人以上の労働者を使用する事業場」で実施義務が発生します。ただし、正社員の3/4以下のパート・アルバイトや休職中の労働者は実施しなくても構いません。派遣労働者については、原則派遣元に実施義務がありますが、集団分析を行う必要性から、派遣元、派遣先両方での実施が望ましいとされています。
※ストレスチェックについて、職場は労働者が受検する環境を準備・提供する義務がありますが、実際に受検するかどうかは従業員に委ねられています(受検は労働者の義務ではありません)。
衛生管理者(安全管理者)
「常時50人以上の労働者を使用する事業場」で選任義務が発生します。
次に、企業の人事総務担当者の方、衛生管理者の方が関わることのとても多い「一般定期健康診断」と「衛生委員会」についても具体的な義務と運用について見ていきたいと思います。
一般定期健康診断
就業時間が正社員の3/4時間以下のパート・アルバイトや休職中の労働者は実施しなくても構いません。派遣労働者については、派遣元に実施義務があります。
※一般定期健康診断は、会社に実施義務(労働者に対する「安全配慮義務」)があります。また、ストレスチェックとは異なり、労働者にも受検義務(会社が提供する健康管理や労災防止の取り組みへの協力=「自己保健義務」)があります。労働者の自己保健義務違反が原因で会社に何らかの不都合が起きた場合、会社は労働者を訴えたり、罰則を課すことができます(労働安全衛生法第66条に規定)。
衛生委員会(安全委員会)
「常時50人以上の労働者を使用する事業場」で設置義務が発生します。
「常時使用」、「事業場」は少し曖昧な表現ですが、ご理解頂けたでしょうか?また、それらの言葉を含んだ「常時50人以上の労働者を使用する事業場」を義務・要件とする「産業医」「ストレスチェック」「衛生管理者」「一般定期健康診断」「衛生委員会」も、運用で若干の違いがあります。この記事を参考に間違いの無いように運用して頂ければ幸いです。
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