うつ病 休職

うつ病で休職中に飲み会参加はNG?休職は権利か義務か判例を交えて解説

  • 2021年4月12日
  • 休職
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休職は、従業員がお休みすることのできる権利なのでしょうか?それとも、従業員の休まなければならない義務なのでしょうか?今日は休職についての細かい内容を説明していきたいと思います。

休職は法律で定められている?

うつ病 休職

実は、労働基準法に休職についての規定はありません。休職に関する指針が示されている訳でもなく、休職はそれぞれの会社が制度の在り方や内容を決めることができます。つまり、休職は「法律で当然認められる」ものではないのです。

休職に至るまでの過程や内容は人それぞれです。手術が必要なくらいの病気の場合もあれば、会社に一定の要因があるメンタルヘルス不調の場合もあります。しかし、どちらの場合でも、休職者は療養専念義務を果たさなければなりません。

【療養専念義務】
病気やケガの療養のため休職している場合、労働者は療養に専念しなくてはならない。療養中に病気やケガを 増悪させる行為をしたり、回復を妨げる行為をすることは自己保健義務に違反する。

こんな休職者がよくいます

療養専念義務に関しては、企業の人事総務担当者より相談を受けることがあります。例えば「休職中の社員が登山に行ったみたいで、その様子をインスタグラムに載せているんです。これっていいんですか?」と言った感じです。

この「登山」の部分が「BBQ」だったり、「飲み会」だったりもしますが、同様の問い合わせはとても多いです。倫理的に良いか悪いかというのであれば、私は間違いなく「悪い」とお答えします。しかし、会社の方が聞きたいのは、倫理的な部分でなく法律的な部分です。

私は法律家ではありませんので、過去の判例を用いて説明するかたちとなります。

うつ病休職中に飲み会:判例は?

過去の判例はこういった感じです。

休職者Aさんは、うつ病の診断を受け休職していました。しかし、休職中に【ゲームセンターや公営賭博場に出掛ける】【バイクで頻繁にツーリング】【飲み会に参加】【性風俗の店に立ち入り】などし、それをSNSに投稿していたのです。

会社は「休職中の療養専念義務違反だ」として、Aさんを訴えました。当然のことだと思います。例え訴えないにしても、到底容認できることではありません。しかし、それに対し裁判所は、「療養専念義務に違反していない」との判断を下しました。

なぜ、そう判断されたのか?その具体的な理由は以下の通りです。

「それらの行為が療養に資することもあるということは広く知られている」
「それらの行為でうつ病に悪い影響を与えたと考えられる証拠がない」

うつ病で休職中に飲み会はOK

うつ病 休職

うつ病などのメンタルヘルス疾患は、外出や他社との交流などの楽しいと感じることを適度にすることで、症状の回復に良い影響を与えるとされています。Aさんに関しても、休職中に取った行動が必ずしもAさんの療養を阻害するものであったとは言えないということなのです。

もちろん、休職中に何をしても許されるという訳ではありません。休職中の行動が療養を阻害すると考えられた場合は、療養専念義務に違反したと判断が下されるでしょう。ただ、一般的に考えられること以上に、裁判所の考える療養の範囲は広いようなのです。

ただ、裁判所は、労働安全衛生法に規定された療養専念義務に違反しないことは認めましたが、「休職期間中に療養に専念する行動をすることが望ましいと言うべきであるから、それに反した行為をした場合には就業規則に則した服務規律違反が問われることもやむを得ない」とも判断しています。

つまり、会社のルールで規定されている場合はそれに則って懲戒の対象にもなりうるということです。

会社としての説明の仕方

ただ、SNSへの投稿も飲み会への参加なども、療養専念義務に違反しないと裁判所は判断していますし、会社外の私生活の部分への介入にはリスクがあり、強制することはできません。なので、現実的には処罰するということは難しそうです。

しかし、会社が休職中の立場では逸脱していると感じることを止めてもらうことはできます。

「休職中に●●●して気分が晴れるのならそれを止めることはできないけど、それをSNSに投稿すると、他の社員から良く思われないかもしれないから止めておいた方がいいよ」という助言であれば、法律的に問題ありませんし、ある程度の抑止力にはなるでしょう。

「逆の立場になって考えてみて。あなたの仕事を代わりにやってくれている人もいるんだよ」「あなたは何とか頑張って▲▲▲しているのかもしれないけど、他の人は『▲▲▲できるのなら、仕事に来ればいいのに』って思う人もいるよ」など本人が想像しやすい具体的な事例を挙げてもいいかもしれません。

誤解のないようにお伝えしますが、メンタルヘルス不調で休職されている方のほとんどが療養専念義務を遵守し、職場復帰を目指しています。

しかし、「新型うつ」と言われる方の中には、会社に出社して仕事をすることはできないが、それ以外のことは特に問題なくできてしまう方がいます。「たまには外に出ないと」とか「リハビリがてら」など自分に上手く言い訳しながら、積極的に楽しいことに参加する方もいるのです。

休職時の権利まとめ

うつ病 休職

就業規則に定められている場合、休職は労働者の権利となります。しかし、休職中に何をしても良い訳ではありません。

正確に言うと、して良いことの自由度は思っている以上に高いですが、それをしていることをSNSに投稿したり、同僚に見られたりした場合、休職者は大きな不利益を被ることになります。例え処罰はされなくても、同僚は復職をこころから喜んでくれないでしょう。

復帰後の働きつらさにも影響してしまうかもしれません。人には感情があります。その感情を止めることはできません。そうならないように休職者は気を付けなければなりませんが、会社側もそうならない配慮が必要だと思います。

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