ストレスチェック

義務化されたストレスチェック制度とは?実施方法、費用や罰則等詳細を解説

労働安全衛生法の改正(2014年)により、常時50名以上の労働者を使用する事業場はストレスチェックの実施が義務化されています。そこで今回は、ストレスチェックの義務化の経緯や対象者、実施方法などについて詳しく解説します。

義務化されたストレスチェックとは?

ストレスチェック

ストレスチェックとは、労働者の精神的な不調を未然に防ぐための検査で、職場環境改善のきっかけにもなります。実施方法は「自分のストレス状態がどのようなものなのか」についての57問の質問票に労働者が記入するかたちで進めます。

結果は個人に返却され、記入時点での自身のストレスの程度を知ることができます。企業によっては、それを集計・分析、職場の環境改善のためのデータとします。

※ストレスチェックの実施は、従業員の回答内容などに関する個人情報保護、専門的なデータ分析の必要性などから、EAP業者に委託されるケースがほとんどです。また、分析は回答者が特定されないよう母数10人以上でないと実施してはいけないことになっています。

労働者50人未満の事業場ではストレスチェックは義務化されておらず、「努力義務」となっています。しかし、義務化されていない小規模の事業場でも、進んで実施することが望まれています。

ここでいう、「事業場」とは「働く場所」のことで、会社単位でストレスチェックが義務化されているのではなく、「本社」「支店」「工場」などの単体で労働者50人を超える場所のことを指します。

健康診断とストレスチェックとの違い

健康診断とストレスチェックは同じようなものと考える人が多いですが、比較してみると違うところもあります。健康診断は労働者に受検が義務付けられていますが、ストレスチェックは労働者個人に受検義務はありません(事業場側が労働者の受検体制を作ることは義務となっています)。

また、健康診断は結果が会社に報告されますが、ストレスチェックの場合は本人の同意がない限り、結果が会社に知られることがありません。

※ストレスチェックの場合は結果を知ることができるのはストレスチェックの実施者(産業医、保健師など)、実施事務従事者(人事権のない少数の総務担当者)のみとなっています。

ストレスチェックに罰則などはある?

ストレスチェックの実施は労働安全衛生法第66条10において義務付けられていますが、仮に実施しなくても罰則は科せられません。ですが、50人以上の労働者がいる事業場は労働安全衛生法第100条により、労働基準監督署に対してストレスチェックの報告の義務があります。

また、労働安全衛生法第100条にある報告義務を怠った場合は「五十万円以下の罰金に処する。」とされています。逆に事業場の労働者が50人未満の場合は報告義務そのものがないので、当然罰則も科せられる事はありません。

罰則も科せられる事はないのですが、ストレスチェック未実施の場合、従業員の安全に対する配慮が充分になかったとして労働契約法第5条の違反となる可能性もあります。また、安全配慮義務違反を行なっても罪に問われることはないのですが、万が一業務上のストレスにより労働者が疾患を負ったり死亡したりした場合は訴訟で不利となります。

ストレスチェックの意味を充分に理解して適切な時期に実施するようにしましょう。また、報告義務はストレスチェックを実施しない場合でも必要です。

ストレスチェックの対象者と非対象者

ストレスチェック制度の対象者は、国籍も関係なく、外国人であっても対象者となり、厚生労働省の定めている「常時使用するもの」に該当する労働者になります。

また、労働時間が、1週間のうちで通常の労働者の4分の3以上で契約期間が1年以上といういずれかの要件を満たす必要があります。直接雇用のパートやアルバイトは制度の対象者ですが、事業者である社長や役員、派遣労働者は制度の対象外です。

※ストレスチェックを受検させる労働者かどうかの基準は、健康診断の対象者と同様と考えると分かりやすいと思います。派遣労働者は派遣元に実施義務がありますが、職場環境改善の観点から見ると、派遣先でも実施することが望ましいと考えられています。

ストレスチェックの実施が義務付けられているのは労働安全衛生法施行令第5条により「常時50人以上の労働者を使用する事業場」です。「常時使用するもの」として厚生労働省が定めている事ではなく「常時使用する労働者」は常態として使用しているかどうかが判断基準となります。常態として使用されている(継続雇用される)場合には週1日のパートであっても、労働者としてカウントします。

ストレスチェック制度の実施手順

ストレスチェック
ストレスチェックの実施者となれるのは以下の人達となります。医療的な知識に基づき、ストレス判定を行います。

1.医師
2.保健師
3.厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師または精神保健福祉士

以下の4ステップでストレスチェックを進めていきます。

1.事前準備
2.実施
3.説明・報告
4.改善

ストレスチェックは、会社・事業所単位で大規模に実施される場合には専門のEAP業者に運用を依頼します。しかし、ストレス判定を行う実施者については普段から労働者と関りがあり職場の環境を把握している産業医や保健師が実施することが望ましいと考えられています。

また、社長・役員・人事部長など労働者に対し人事権を持つ人は個人情報保護の観点や、検査結果が人事に影響することを防ぐ観点から、ストレスチェックの実施者にはなれません。

※先に記載したように実施者は、医師などの一定の医療資格者しかなることができません。実施事務従事者(ストレスチェックの事務的運用者)は医療的な資格は不要ですが、人事権がある方はなることができません。

ストレスチェックの事前準備

ストレスチェックを行う事前準備として、以下のことを決めておきます。

・制度全体の担当者
・実施事務従事者
・実施対象・日程
・質問票の選定
・実施者・面接指導者の選定
・集団分析の方法
・高ストレス者の選定方法・対応方法
・結果の保存担当者・保存方法

ストレスチェックの実施が決まり次第、事前に従業員に伝達します。いつ、どこで、何を目的とし、どのような検査を行うかを伝え、従業員が安心して受検できるようにしましょう。

また外国人の従業員がいる場合は、翻訳版の周知文書・ストレスチェックの質問書も用意しておきしっかり理解が得られるようにしましょう。ストレスチェックで得た個人情報は保護され、第三者の目に触れたり人事に影響したりすることはないことも伝えておきます。

ストレスチェックの質問事項と実施

ストレスチェックの質問事項は国が推奨する57項目の質問票を厚生労働省の資料にある「ストレスチェック制度実施マニュアル」を参考に作成するといいでしょう。
※ストレスチェックの受検はウェブでも可能です。

労働者に質問事項の書かれたチェックシートを配りそこに記入してもらいます。記入し終わったチェックシートは中が見えない封筒などに入れ実施者または実施事務従事者が回収します。医師などの実施者が評価を行い、チェックシートの結果から、高ストレス者や医師の面接指導が必要な労働者を選定します。

特殊な仕事をしている事業所でも、人の心の健康は人間関係や過剰な職務による負荷が影響していることがあるので、一般的な質問事項によって十分診断できると考えられます。

面談・分析~改善

実施者がストレスチェックの回答を元に、ストレスの程度を評価します。高ストレスで医師の面接指導が必要な従業員がいた場合、その従業員と面談などを行い個人別にアドバイスなどを行います。

その際ストレスチェックの結果や、高ストレス者がいたかどうかは、企業には通知されることはありません。結果報告や意見聴取を医師から受けた場合は、面接指導後の1ヶ月以内に面談を行う必要があるので注意が必要です。

※高ストレス者で医師面接指導を希望した従業員は、ストレスチェックの結果を会社に開示することを承認したものとされます。それは、本人のストレス軽減のために、高ストレスとなった実際の回答内容を知る必要があるからです。会社への開示は最小限の内容と範囲であることが望ましいとされています。

本人からの面接指導申し出があった場合

ストレスチェック

労働者本人がストレスチェックの結果を受け、面接指導を受けたいとの申し出があった場合、以下の対応が必要です。

・面接指導対象に該当するかどうかを確認
・面接指導を実施する医師の決定
・面接指導の場所や日時の調整

この際、当該事業場の産業医または、産業医資格を保有する外部の医師から面接指導の医師を選ぶことが望ましいとされています。面接指導は、従業員の申し出があってから概ね1カ月以内に実施し、面接指導を実施してから約概ね1カ月以内に、面接指導を行った医師から従業員に対する就業上の措置に関する意見の聴取を行います。

この際就業上の措置が必要とされた場合、当該従業員の意見を聞き、就業場所の変更や労働時間の短縮、業務内容変更などの措置を取ります。

個人情報・プライバシー保護

ストレスチェックに関わる個人情報を扱う人には法律により守秘義務が課されます。違反した場合は刑罰の対象となります。個人のストレスチェックの内容は、プライバシーに触れる非常にデリケートなもののため、当事者と実施者、実施事務従事者以外の第三者に、質問への回答やチェック結果が他人に漏れることはあってはなりません。

ストレスチェック制度の費用

ストレスチェック制度の実施には、費用がかかりますが、その実施費用は、事業者が請け負うことになります。ストレスチェック制度に関する費用のかかる項目として以下のようなものがあります。

・ストレスチェックの実施方法や制度についての審議
・ストレスチェック質問票などの書類の準備
・ストレスチェックの実施
・実施後の高ストレス者の医師による面接指導
・受検結果の集団分析

このように数多くの工程で成り立っているため大きな割合を占めるのが人件費です。これだけのことをやっているとそれぞれにコストがかかり、人件費の負担が大きくなるのは一目でわかります。

さらに医師の面接指導を受ける事が、費用が膨らむ原因のひとつとしてあります。目安として、(診断する医師によっても違いますが)1時間の面接で3~5万円程度かかるといわれています。

ストレスチェックは、厚生労働省が57項目の質問票を公開しており、自社で実施することも不可能ではありません。しかし、煩雑な運用、個人情報への配慮、データ管理、専門的なデータ分析など、自社で実施することは決して容易いことではありません。担当者の負担(最も負担が大きいのは実施事務従事者)を考えると、EAP業者へ委託する方が現実的かもしれません。

フィードバックの専門性や医師面接指導のフォローの有無により料金に差はありますが、WEBの場合、1人につき500円~1,000円で実施可能です。

労働基準監督署への報告

「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」がストレスチェック報告書の正式名称です。ストレスチェックの報告の際には厚生労働省の指定する書式の報告書を使用します。

ストレスチェックを複数月にわたって実施した場合、書類の作成の際には必ず最終月を記載しましょう。報告書提出時期は事業場における事業年度の終了後など、事業場ごとに自由に設定できるなど、例外があるため注意しましょう。

また、年間を通して部署ごとにストレスチェックを実施する事業場では、検査暦年1年間での受検者数を記載します。そして、受検者数に対して面接指導を受けた労働者の人数も報告します。

ストレスチェック結果の保管

実施者または事業者から指名された実施事務従事者がストレスチェックの結果を、責任を持って保管しなくてはなりません。

その際事業者は、適切な保管をするために保管場所を決め、セキュリティの確保などの措置をしなくてはなりません。記録保管方法には、書面記録、電磁的記録の2種類があり、事業場にあるサーバー内にデータを保管することも可能です。(実施者における記録の保管期間は5年間となっています。)

ですが、保管の責任は実施者にあるため、事業者が個人に関するチェックの結果を観覧、利用することはできません。ただし、集団ごとの集計や分析結果は事業者が職場環境の改善などを目的としているためいつでも有効活用できます。この際、集団ごとの結果を保管する期間も、5年間が望ましいとされています。

ストレスチェックまとめ

ストレスチェック

ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場に義務付けられた“こころの健康診断”です。

ストレスチェックの大きな目的は

①労働者が自身のストレスに気付くことで、メンタル不調を未然に防ぐことができる
②部署ごとに集計したデータをもとに職場環境改善を行う。 

上記二つです。50名未満の事業場でも、労働者のメンタルヘルスを守るために、積極的に実施しましょう。

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