衛生管理者

衛生管理者とは?必要な資格、第一種・第二種の仕事内容や年収など詳しく解説

「衛生管理者」は、労働安全衛生法で定められた国家資格です。

この記事では、衛生管理者の職務や配置するメリット、選任する際の注意点など、衛生管理者に必要な資格と条件、業務の種類などについて、衛生管理者とは何?と言った疑問をお持ちの方に詳しく解説していきます。

衛生管理者の選任と届出

衛生管理者

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、その事業場専属の衛生管理者を選任する必要があり、衛生管理者には衛生工学衛生管理者・第一種衛生管理者・第二種衛生管理者の3種類があります。

このうち第一種衛生管理者、第二種衛生管理者免許を取得するには、厚生労働大臣が指定する試験機関が実施する試験の合格がなくてはなりません。衛生工学衛生管理者は、試験は行われておらず、一定の受験資格を有する人が厚生労働大臣の定める講習を受けて、修了試験に合格することで取得できます。

事業場は衛生管理者の選任義務が生じた場合、14日以内に選任を行い、選任報告書を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。ただ、前任者が突然退職した、もしくは死亡してしまったなど、選任義務が生じたが14日以内にどうしても選任できない場合は、労働基準監督署に報告することで、およそ1年以内の期間、選任を免除してもらえます。

しかし、衛生管理者の業務を代行する人を選任する必要があります。

衛生管理者の役割と業務内容

労働者の健康障害や労働災害を防ぐために、労働安全衛生法で定められた国家資格を取得している人のことを「衛生管理者」といいます。具体的に労働災害とは、業務を起因とする中毒、体調不良、職業性疾病及び結果としての死亡事故のことをいいます。

例えば、長時間の労働やストレスによってうつ病を発症したり、過度な重量物の持ち運びによる腰痛、長時間のモニター画面作業による目の病気、暑熱職場による熱中症、有害物のばく露による健康障害等が主なものになります。

衛生管理者と労働安全衛生法

「労働安全衛生法」とは労働者を守ることを目的とした法律で、事業者による健全な労働環境の提供と、労働災害を防止することが法律によって定められています。企業の規模や業種の区分に応じて「衛生管理者」を選任し、衛生に関する技術的事項の管理を任せることが記載してあります。

常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で「衛生管理者」を選任する必要があるのですが、事業場を一つの単位として業種や規模などに応じて適用され、その適用範囲は労働基準法と考え方は同じになります。

衛生管理者の実際の業務

企業の中で、安全衛生業務に取り組みます。安全衛生業務は「健康管理」「作業環境管理」「作業管理」の3つから成り立っています。具体的には

労働者の健康管理

衛生管理者の業務として最も大切なのが、労働者の健康管理です。定期的に健康面の問題をチェックし把握するためにも、労働者全員が健康診断を受検できるよう調整します。

作業環境の衛生上の調査

労働者が良好な衛生環境の中で業務を行っているかを調査します。作業場所の騒音、温度・湿度、換気状況、事業場内の照明の明るさなどはもちろん、有害物質が労働者の健康に影響を及ぼしていないかも調査します。

事業場の巡視

最低週に1回は事業場を巡回し、事業場の環境や、作業の方法などが安全であるかチェックします。

労働衛生保護具、救命用具などの点検及び整備

労働者の思いがけない事故や急病に備え、労働衛生保護具や救急用品の点検を日頃からしておく必要があります。
※労働衛生保護具…化学防護手袋、保護めがね、化学防護服、呼吸用保護具(防毒マスク、粉塵マスクなど)など

衛生教育、健康相談

労働者に対し安全衛生についての研修を行います。健康に関する相談も行います。

衛生事項の管理

直接雇用される労働者だけではなく、派遣や出向の労働者も含めた安全衛生管理を行います。

衛生に問題がないか調査

労働者の作業条件や衛生面の問題がないか調査し、問題があった場合には改善を進めます。衛生日誌の記載など労働者の安全を把握するための、日誌を作成します。作業場でのアクシデントやインシデント、休職者の名前や人数などを記録します。

日誌を継続的につけることで、事業場の抱える問題が露になったりと、職場環境改善の手掛かりとなることがあります。

衛生管理者を配置するメリット

衛生管理者

衛生管理者が相談窓口になり相談を受けることによって職場環境の悩みや不安を早めに知ることができます。また、健康診断結果を衛生管理者が管理をすることによって、従業員の病気の早期発見にも繋がります。これによって長期休業者や病気で早期退職をする従業員の減少が期待できます。

職場環境を整えると、従業員の業務パフォーマンスの向上や従業員が持つスキルを最大限に発揮することにも繋がります。このように、従業員の衛生管理が的確に行われるように「衛生管理者」を配置するのです。

第一種衛生管理者の年収は大手企業の初年度で400万円程度

前に述べたように第一種衛生管理者は常時50人以上事業所を使用する大企業にはとても必要な存在であり、安定度が非常に高い職業ということです。ですが、年収を第一条件に転職を検討している方も多いのも事実です。そういった方のために、第一種衛生管理者の年収事情を簡潔に紹介します。

第一種衛生管理者の平均年収は大手企業の初年度で400万円程といわれています。ですが、第一種衛生管理者は安定した職業ではあるのですが、急激な年収の伸びしろは少ないといわれています。

営業職のように成績などで年収を伸ばしていく職業と違い、第一種衛生管理者は大手企業で働いた場合、初年度の年収が400万円程度とされています。ですが、他の資格などとの併用によって年収を大きく伸ばすことも見込めます。

衛生管理者の業務はやりがいがある

労働衛生計画を実施すると職場全体が協力しあい改善に向かうため、労働環境が改善されていることをと目で見て実感できるようになります。そのため衛生管理者は結果の見える職業として人気の国家資格となっており、受験する方も多いのが特徴です。

加えて、最近では社会問題となっているブラック企業の存在が大きくなっており、劣悪な環境で働く労働者を救うことにつながる衛生管理者の業務は社会的貢献をしている実感を得られるので、これも衛生管理者の人気の一つともいえるでしょう。

第一種衛生管理者とは

全ての職種で衛生管理を行うことができる国家資格の「第一種衛生管理者」ですが、労働基準法で定められている「有害業務」を行っている事業場では「第一種衛生管理者」が衛生管理を行うことはできません。

※有害業務…有害物質などにより、労働者の健康に悪影響を与える可能性のある業務のこと。具体的には、放射線や化学物質の製造や取り扱う業務、工事現場など微粒な粉塵の中で行う業務(粉塵作業)など。

これは「衛生工学管理者の選任」が有害業務を行っている事業場では義務づけられているためなのですが、「第一種衛生管理者」は全国にある安全衛生教育センターが主催している講習を4日間受けると「衛生工学管理者」の資格を得ることができます。

第一種が対応している具体的な業種

第一種の対象となる業種は、危険源が事業所ごとに大きく異なり、労働者の働き方が大きく違います。そのため、安全衛生の基本的な知識だけでなく、各現場の働き方について深く理解する必要があります。有害業務を含むため、労働者の命に関わる事故が起こる可能性もあり、とても大きな責任があります。

第一種電気業、ガス業、熱供給業、水道業、農林畜水産業、加工業を含めた製造業、運送業、鉱業、建設業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業など

第二種衛生管理者とは

「第二種衛生管理者免許」を所有している人は、有害な業務と関係性の低い一定の業種で衛生管理者になることができます。

第二種が対応している具体的な業種

第二種の対象となる業種は、営業やデスクワークが基本となりますが、腰痛、VBT作業による目の疲れ、食堂や給湯室でのガス取り扱い、食中毒なども注意が必要です。

第二種情報通信業、金融業、保険業、卸売・小売業、サービス業など

企業の衛生管理者選任の義務

衛生管理者を選任する人数は事業場の規模によって異なるのですが、常時50人以上の労働者を使用する事業場では労働者数に応じて一定数の衛生管理者を企業は選任しなければなりません(労働安全衛生法第十二条第一項による)。これは、医師だけでは事業場の衛生管理を行うことができないからです。

そして、通常であれば衛生管理者は複数の事業場を掛け持ちすることができず専属である必要があるのですが、複数の衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいる場合は専属でなくても対応できます。また、企業が義務に反して衛生管理者を選任しなかった場合、50万円以下の罰金に科されることになります。

事業場で働く労働者数(ここでいう事業場とは支店・支社・店舗など職場を表しています)

選任すべき衛生管理者の数

事業場の規模(常時使用する労働者数)に応じて、下記の数以上の衛生管理者を選任しなければなりません。衛生管理者の人数は働く従業員の人数によって比例して増えていきます。

従業員数衛生管理者
50人~200人1人
201人~500人2人
501人~1000人3人
1001人~2000人 4人
2001人~3000人5人
3001人以上 6人

衛生管理者の受験要項

衛生管理者試験

地域により試験の開催頻度は異なります。取得するチャンスが豊富なのが特徴で、毎月1~4回ほど開催されています。受験費用は第一種・第二種ともに6,800円となっています。

※衛生管理者は国家資格のため、国家試験に合格する必要があります。

衛生管理者資格の合格基準と合格率

2017年度~2019年度までの合格率は、第一種が44~46%、第二種が51%~55%程度となっています。

衛生管理者試験の合格基準

科目ごとの得点が40%以上、かつ全科目の合計が60%以上で合格です。

一科目でも40点未満だと不合格なので、注意しましょう。

衛生管理者の受験資格

安全衛生技術試験協会が主催する試験を受け、その試験に合格すれば衛生管理者の資格を取得することができます。試験を受ける際には、学歴に応じて労働衛生の実務経験が必須です。

下記が実務経験の一例になります。

・大学または高等専門学校(短大を含む)を卒業している。
・高等学校を卒業後、3年以上労働衛生の実務経験がある。
・労働衛生の実務経験が1年以上ある。
・労働衛生の実務経験が10年以上ある。

【出典】公益財団法人安全衛生技術試験協会:受験資格

勤務形態は問われません。アルバイトで労働衛生に関わっていたとしても大丈夫です。また、複数の職場で労働衛生に関わった場合、合計年数で計算します。なお、事業者証明書は安全衛生技術試験協会のホームページからダウンロードができます。

衛生管理者資格の試験内容

第一種は関係法令と労働衛生が17問ずつです。配点が各150点となっており、労働生理が10問で配点が100点です(400点満点)。一方で、第二種は全ての科目が10題ずつ出題されていて配点は各100点です(300点満点)。

第一種衛生管理者の方が第二種衛生管理者よりも範囲は広く、問題数も多くなっています。なお第二種衛生管理者資格を取得した人が第一種衛生管理者の試験を受ける場合、「特例第一種衛生管理者免許試験」として、労働生理の科目が免除になります。

衛生管理者合格後の手続き

衛生管理者試験に合格したら、都道府県労働局、各労働基準監督署、安全衛生技術者センターで配布している免許申請書に必要事項を記入します。そして、指定された必要書類と免許試験合格通知書を同封して、東京労働局免許証発行センターに免許を申請します。

衛生管理者の免許は申請をしなければ発行されません。また、免許は一度取得したら更新の必要はありません。

衛生管理者の業務内容、資格取得方法まとめ

衛生管理者

今回は衛生管理者の選任義務や選任するメリット、そして資格の取得方法などを紹介してきました。

労働災害は時に健康や命に関わるものもあります。資格を取得することも大事ですが、衛生管理者として職務を実行し職場を正しい方向にリードしていきましょう。あなたが無事試験に合格したのであれば、従業員の健康維持のために重要な役割を果たすのが衛生管理者の仕事です。

衛生管理者として専門性を存分に発揮し、健康経営を目指しましょう。衛生管理者は労働災害を防ぐ大切な役目を担っているエキスパートです。

衛生管理者とは?まとめ

メディアトピックスでは衛生管理者資格試験の受験資格、難易度、過去問情報、合格率、講習、申し込み方法、費用、合格率、見込み年収など様々な情報をまとめております。これから試験を受ける方や興味のある方の参考になれば幸いです。詳細は下記の記事をご覧くださいませ。

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