「職場巡視」は、労働安全衛生法で定められている産業医や衛生管理者の重要な業務のひとつです。産業医や衛生管理者が実際に作業場の見回りをし、職場環境の衛生面や従業員の健康を維持する上での問題発見と改善につなげることを目的としています。これまで産業医の職場巡視は月に1回となっていましたが、条件付きで2ヶ月に1回の巡視でも構わないことになっています。
産業医が行う職場巡視の重要性
産業医は、労働者の健康や安全を守るため、事業場や工場などを実際に回り、職場の状況を隅々まで観察します。そして、職場に潜む危険や健康問題を察知し、解決に向けた取り組みを行います。また、単に職場を巡視するだけでなく、従業員とのコミュニケーションをとる場ともなります。
職場巡視のチェックリスト
職場巡視ではどのようなポイントが重要視されるのでしょうか?確認事項は企業により異なりますが、特に注目される点について説明していきます。産業医作成のチェックリストなども配布されているので、気になる方はグーグルなどで検索してみることをおすすめしております。
エクセルなどで配布されている場合もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
温熱・空気環境
(1)作業環境(温度・湿度・気流・輻射熱)は快適か?
(2)冷房・暖房は適切か?
(参考)衛生基準規則…室温17~28℃以下、湿度40%以上70%以下
(参考)職場快適基準…夏24~27℃、冬20~23℃、50~60%の湿度
※冷暖房の温度設定ではない!
(3)受動喫煙防止対策はなされているか?
(4)気積(きせき)は十分か?
※気積…場所の床面積×高さのこと。労働安全衛生法では、設備の占める容積及び床面から4メートルを超える高さにある空間を除き、労働者一人について、10立方メートル以上としなければならない。
(5)換気は行われているか?
(6)空調設備は点検されているか?
(7)燃焼器具などは適切に使用されているか?
視環境・音環境
(1)採光・照明による明るさは良いか?(照度、全般照明、局所照明)
(参考)一般事務でも最低500ルクス、通常750ルクス以上、設計業務では1500ルクス以上が推奨
(2)VDT作業は適切に管理されているか?
(3)85dB以上の騒音箇所はないか?
(4)耳栓などの備付は十分か?
作業場
(1)床はつまずいたり滑りやすくないか?
(2)通路は確保されているか?幅は十分か?
(3)柵や手すりは安全か?
(4)階段は昇降しやすく、安全か?
整理整頓
(1)製品、原料、工具などは決まった場所に置かれているか?
(2)配線、コンセントなどは安全に管理されているか?
(3)倒れやすいものや転がりやすいものはないか
(4)地震対策をしているか?
(5)出入口、非常口、消火器・消火栓などの周囲に物が置かれていないか?
(6)清掃は行き届いているか?
(7)廃棄物などの処理と管理は適切か?
休憩室
(1)臥床またはゆっくり座ることができるか?
(2)静かで清潔か?
(3)冷暖房の温度などは適切か?
(4)換気設備は適切か?
(5)仮眠室の環境は適切か?
(6)洗面施設、トイレ、シャワーなどは清潔に保たれているか?
(7)冷蔵庫、給湯室などは清潔に保たれているか?
作業方法
(1)不自然な作業姿勢(捻り、前屈みなど)はないか?
(2)重量物の運搬方法は適切か?
(荷物の重さや形状、持ち運びの姿勢、省力化装置、作業時間など)
(3)VDT作業の作業時間は適切か?
その他
(1)安全衛生(健康管理、ハラスメント、メンタルヘルス)に対する健康教育は行われているか?
(2)救命用具、AEDなどは設置されているか?
(3)防災備品は適切に管理されているか?
(4)防火・防災訓練は実施されているか?
職場巡視の目的や法律まとめ
上記の確認事項はあくまで一例です。オフィスワーク、工場、医療機関など働く環境により確認事項は様々です。工場の場合は、工場の内容によっても確認事項は大きく異なります。
確認事項に問題があった場合は、衛生委員会などで報告し改善を促します。産業医の職場巡視は1ヶ月に1回(条件付きで2ヶ月に1回)、衛生管理者の巡視は1週間に1回となっています。巡視する中で必要な項目があれば追加したりして、職場巡視が労働者の健康や安全を守るために意味あるものとしましょう!
産業医とは?まとめ
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